阿寒平太の世界雑記

World notebook by Akanbehda

日: 2018年7月26日

面白い飛行地図、そして日本の海の守り

私がULP(超軽量飛行機)に乗っていた時、飛行クラブにはTactical Pilotage Chartというた航空地図が準備されていました。この地図は、最新型の電子制御のジェット機にも搭載されているそうです。この地図は、米国ミズーリ州セント・ルイスにある「Defense Mapping Agency Aerospace Center」で発行されており、100㎞角のグリット毎の最低飛行高さが記載されています。また、この地図には地形などの一般の地図情報以外に軍用、民生用も含め全ての飛行場の位置、滑走路長さ、方向などが記載されています。

飛行機が緊急事態になった場合、どこの飛行場にも着陸ができるという国際ルールがあります。そのためこの地図には民間だけではなく軍隊が所有している飛行場も記載されています。下の地図はカイロ周辺の飛行場の位置が記載されています。

カイロ周辺の飛行場を示す航空地図

沢山の飛行場が記載されていますが、この地図のカイロからアレキサンドリアに向かう道路の上に飛行場マークがあります。これは道路そのものが緊急時(多分、戦争時)の飛行場となる代替滑走路で、通常は高速道路で使用しており、中央分離帯の部分はコンクリートの分離ブロックが置かれていますが、戦時にはその分離ブロックは片付けられて飛行場に早変わりします。このタイプの飛行場はイスラエルやパキスタンでも見ましたが、周辺には離着陸に障害となる看板や街灯が一切なく、道路もまっすぐですからすぐに判断できます。

エジプトの高速道路の代替滑走路

さてこの地図には、滑走路長さ3,000feet以上の大型の飛行場(地図上の●)と小規模な飛行場(地図上の○)が記載されていますが、エジプトの場合、近くに行くとすぐに飛行場の位置が確認できます。ところがイスラエルでは近くに行っても滑走路は見えず飛行場があるのか確認できませんが、大部分でドーム型の丘が見えますので戦闘機基地かと判断できます。ドーム型の丘はコンクリートの上に土を被せた戦闘機の格納庫だと聞きました。このドームがない所は、地下に格納庫を設置しているのだと聞きました。

イスラエルの飛行場を示す航空地図

長らくエジプトに住み、アラブ側からイスラエルを長く見てきた筆者からは、『イスラエルは、国連決議を守らず、殆ど武器を持っていない人々を、高性能武器で攻撃する』というイメージで、いい感情を持っていません。しかしイスラエルは、周辺をアラブ諸国に囲まれ、国そのものの存在を危うく感じる中で、国際社会から非難があろうと、国連決議も無視し、領土を拡張し、コンクリートの塀を造り、戦闘態勢を構築する事が中東戦争から学んだことなのかもしれません。

(しかし、国際的な責任もかえりみず、状況を悪く悪くするようにアホなことをする西洋歌留多には腹立たしい限りです。)

しかし、イスラエルや北朝鮮の様に国際社会を向こうに回しながらも、国の立場を堅持していくというしたたかな外交感覚は素晴らしいものです。日本の政府も少しは見習ってほしいものです。

日本の場合、周りが海ですので防空体制も大切ですが、加えて海の防衛体制が必要になります。海上自衛隊下総航空基地の基地記念日にP3-C対潜哨戒機に乗せてもらったことがありました。その時の機体は米軍からのお下がりで、乗員11人搭乗可能で米軍が使用していた時は控えの乗員用に休憩用のベッドも備わっていますが、自衛隊の場合は半分の乗員で運用しており、ベッドは無用の長物になっていました。(今は日本でライセンス生産されていますので多分、内部は実情に合わせて変わってきているでしょう。)

P3-C対潜哨戒機

朝6時前に3食のお弁当を持って離陸し、夜遅くに着陸するまで東京以北の太平洋側を飛行し、沢山のソノブイを投下し、音響及び磁気、赤外線探査などを行っていきます。機体の諸元では対潜爆弾、魚雷、対艦大型ミサイルなどの武器も搭載可能との事。機体の内部は沢山のソノブイのラックと情報処理用のコンピューターで占められていました。
この搭載されているコンピューターの情報システムは、日本が改良を重ね、現在では日本の対潜哨戒機は世界の中で一番性能がいいとされています。機体も川崎重工業がライセンス生産しており合計で98機を海上自衛隊向けに製造して、その性能は、updateされているとの事。

前稿の「ひこう中年」と言う気楽な話発展して国の防衛と言う話まで飛んでしまいましたが、災害派遣だけではなく日夜、その本来の目的の日本の防衛のため努力している人たちがいるという事を忘れてはならないと感じています。

 

ひこう中年

『私はひこう中年でした。』と言うと「実を言うと、私も相当悪だったんだよ。」と言われる方も居られるのでは?
しかし、今回お話しすることは、「非行」の意味は多少あるもの、主に「飛行」の話です。

誰しも「鳥の様に空を飛びたい!」と言う夢を持っているのではないでしょうか。私がエジプトで仕事をしていた時、民間の飛行クラブの会員でした。その飛行クラブは、現在のカイロ国際空港が使われる前の古いカイロ空港でモハンデシン地域の西にあり、会費はなしで、費用は飛行時間1時間当たり30US$だけでした。小さな格納庫の前に何人かの中年の男たちが座って話をしており、その中の一人が「今から乗るか?」。講義も脱出訓練も何もなく、出会ったのが、ウルトラ・ライト・プレーン(Ultra light plane超軽量飛行機ULP)でした。

グライダーに小さなエンジンとプロペラを付けた代物で機体重量は300㎏、離陸重量は450㎏程度ですので、オートバイに翼をつけたようなものです。

古いタイプのULP(Tandem-type)。今は翼が機体の上にあるタイプが主流。タンデム・タイプ

 

side-by-side TypeのULP

一人乗りと二人乗りがあり、二人乗りは横に二人が並ぶ形式のside-by-sideと前後に並ぶTandemの2つのtypeがあります。私が乗ったのはTandem-typeで、前の席に生徒、後ろの席に教官が乗ります。基本的にはどちらの席からも操縦できます。 操縦席の前には、足の間に挟む位置にスティック(棒)の操縦桿があり、前面には燃料計と油圧計、高度計、速度計、座席の横の床には車輪の上げ下げを手動でするギヤがあります。操縦席を覆うキャノピー(操縦席を覆うプラスチックの天蓋)には空気取り入れ用の手で開け閉めする小さな子窓があります。

実に単純なコックピット・フロント

シートベルトは、旅客機のアテンダント席にある様な胸の前でクロスするタイプの物で、それだけでも少しプロ的で胸躍る思いですが、ジェット機のパイロットの様にパラシュートも旅客機の様にライフ・ジャケットも何もなし。多少、不安になり教官に聞くと操縦席の背もたれの後ろについている直径20cm、高さ40cm程のアルミ缶を指差した。それがパラシュートで下の紐を引くとキャノピーが外れ、自動的に開くとの事。つまりこのパラシュートは飛行機ごと空中に浮かせる物なのです。

セルモーターでエンジンを掛け、管制塔に許可を貰いタクシーイングで滑走路に。離陸の許可を貰い、エンジンを吹かして加速して時速90kmを越える辺りで、それまで前に倒していたスティック(操縦桿)を手前に引くとフワッと機体が浮き上がりました。そのまま約1,000mまで上昇し、水平飛行に。ここまでは教官がやってくれましたが突如、操縦してみろと言われ、操縦桿を握りました。

「前に倒すと下降」、「手前に引くと上昇」、「左右に倒すとそれぞれの方向に曲がる」、ただそれだけを教えてもらい操縦桿を押すと、機体は急激に下降。教官があわてて機体を戻す。そんなことをやったあとで教官いわく『女性の体に接するときのように、やさしく触れ、押し、引いてやるとすぐに反応する』。30US$/時間でこんな楽しさが味わえるのですから、その飛行クラブは教官や会員はすべて中年という理由もうなずけます。(ULPに乗り始めたころは、女房殿にも何故か言いませんでしたが、深層心理的には後ろめたい何かを感じていたのかも。)

この飛行機ULPは、機体が軽いので上昇気流があると、上空でエンジンを止めてグライダーのように滑空ができます。エンジンを止めると全く音のない世界が生まれます。キャノピーの小窓を開けて手を外に少し出すと、さわやかな外気がコックピットに流れ込んできて、敏感に反応する機体を意のままに動かし、小さな模型のようになった町を見ていると、今まで鎖で地上につなぎとめられていた日常から自由になった気持ちになり、なるほど飛行機に乗るというのはこういうことだったのかと初めて理解しました。 大型ジェット機と違い、この飛行機ULPは空に浮かんで当然という感じがしました。上昇気流の有無には敏感に反応し、ナイル川や畑の上を飛ぶと機体は下降し、砂漠や樹木がほとんどない町の上では、機体は上昇します。

超軽量飛行機ULPから見たカイロの街並み

飛行機にも弱者保護のルールがあります。一番の優先順位は動力がない、グライダーで順次、大きな飛行機になるに従いその優先順位は下がります。ULPはグライダーの次に優先順位は高いのですが、わがもの顔に飛ぶことはできません。大型のジェット機の後方に発生する乱気流に巻き込まれると、ひとたまりもなく空中分解します。

さて、何度か乗り、管制塔とのやり取りができるようになるとStudent licenseという仮免が発行されカイロ周辺の決まった空域を飛ぶことができましたし、本当は飛んではいけない空域でしたが空からピラミッド見物もしました。クラブの4台の飛行機でアレキサンドリアを回るツアーもありました。

ひこう中年、実にいい響きです。両方の意味でも。

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