オペラ劇場の究極の舞台背景
今回はオペラ劇場の舞台背景についてお話ししましょう。
[オペラ劇場と舞台背景]
この舞台背景となる大道具の製作や設置には、どの劇場も独特のSystemを持っています。プラハの国立オペラ劇場(1888年完成)は、第二次世界大戦の際に破壊されましたが、新築当時以上の華麗なオペラ劇場として再建され毎年20以上の演目を200回以上公演しています。ヨーロッパでこの劇場ほど昔の劇場の姿を美しく留めながら、オペラや演劇を機能的に上演できる劇場は無いと言われています。再建の際にオペラ劇場の古い姿を其の儘に保持しながらレパートリー劇場として機能強化を図りました。
このオペラ劇場の周辺に近代的な3つのビルを建築し、地下で結んで大道具、小道具の製作部門を移し、これの移動に特殊なトロッコシステムを導入しました。加えてこれらの3つのビルには演劇、バレー、演奏などの練習場、演劇劇場、音楽関係の協会など舞台芸術に関係する全てのSystemが収まっています。チェコの舞台芸術のレベルの高さはこんな施設によっているのでしょう。 日本のオペラ劇場としては4面舞台を持つ新国立劇場が挙げられます。此処もレパートリー劇場を目指しているそうですが、今後どのような展開に成るのか楽しみです。
下の写真は、イタリアのヴィツェンツァ(Vicenza)にある世界最古の木造オペラハウスと言われるオリンピコ劇場(Theatro Olimpico 1584年完成)です。この劇場には慶長年間1615年にローマ法王謁見の前に支倉常長がこの劇場を訪ねており、劇場ホールにその記念プレートがあります。この劇場の舞台背景は街並み或いは豪華な室内とも見える固定背景です。古代ローマ劇場を模して造られたとい言われていますが、この固定背景の意匠が客席まで続いて一体感を表しています。固定背景の場合、演目は限られますがこの劇場ではモーツアルトの「魔笛」や、ロッシーニの「アルジェのイタリア女」など意外に思うような演目も演じられ、各種の室内楽演奏にも使われています。しかし、此処の舞台背景は究極の背景と言えます。
ヴィツェンツァはルネッサンス期の建築が沢山残されており、建築美術館と言えます。一度は訪問して素晴らしい建築群をお楽しみされるようにお勧めします。