阿寒平太の世界雑記

World notebook by Akanbehda

日: 2018年7月24日

ラマダンの時の神への帰依と食事

兎に角、Ramadanはアラーに対してそれぞれの信仰の念を伝える期間ですから、昼間の水や食べ物から、夜の欲望まで全て控えて、その信仰の念をアラーに伝えます。エジプトの女性達は概してクレオパトラ並に化粧は非常に濃いのが普通です。(実際にクレオパトラを見たわけではなく、エリザベステーラーのクレオパトラからの印象です。)

私の事務所の女性達も飾ると言う欲望を抑えてRamadanのときは全くのすっぴん。朝、会った時は一瞬別人かと思い、それから病気なのと聞いたほどにその変化は劇的でした。

エジプトのラマダンの時でない女性

私がPakistanで仕事をしていた所は、バルチスタン州(以前は北西辺境州と言いました。)のBattagramと言う片田舎の町ですが、通常と違い八百屋やお菓子屋の前にはデーツ(ナツメヤシの実でラマダンの時に必ず食べる物)が山のように盛り上げて売っており、食べ物屋と言う食べ物屋には溢れるほど食料品が山積みになっています。ラマダンのときに人口が飛躍的に増加するわけでもなく、一人当たりの食物摂取量が何倍にもなるわけではありませんので、山のように盛り上げた食料品は最終的には生ごみとなって廃棄されます。

私がエジプトで生活していた時、ザバリンというごみ収集の人たちの村の再開発を手伝ったことが有りました。その時、ラマダンの時は、豚のえさとしては処理しきれないくらいの生ごみが出ると言っておりました。

信仰と言うのは常にある面での何かの犠牲或いは無駄と言うものを要求しますが、ラマダンが始まると色々と地球と言う単位でも考えさせられます。

ラマダン明けの日の街中の喧騒

ラマダンはイスラム暦の9月を指しますが、イスラム暦は、明治時代以前の日本と同じ陰暦で、1年が354日間で太陽暦の365日より11日短い暦です。その為、毎年11日ずつ始まりが早くなります。冬至に近い季節のラマダンは日の出から日没までは短いので、この季節のラマダンは楽です。しかし、今年のように夏至に近い時期のラマダンは断食時間が長く大変です。私もエジプトに住んでいた時、イスラム教徒ではありませんが断食をした事がありました。水を飲まない為、慣れる迄の1週間ほどの期間は頭痛に悩まされます。

もし、周りにイスラム教の方がおられたら、神への帰依と言う行為をしていると言う事へのご理解をお願いいたします。

 

イスラム教の多様性とラマダンの時の生活

今年(2011年)も8月1日から8月22日までイスラム諸国ではラマダン(断食期間)に入ります。

多くの人は、世界に広がっているイスラム教をどこの国でも変わらない単一で普遍の思想と考えているのではないでしょうか。確かに信じているコーランと言う聖典は同じですが国によって、人々の生活の中に現れるものは、全く異なります。そんな生活の中に現れるイスラム教についてお話いたします。

生活の話に入る前に、現在のイスラム教の大きな流れについて少しお話いたします。

現在、インターネットと言う新しい通信手段によって北アフリカ、中近東のイスラム諸国では政治的に大きく変動し、今までの経験則では先が読めない状況が生まれています。又、9.11テロ以降、残念なことにサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」が現実味を帯び、宗教間の対立のニュースが世界を駆け巡る様に成っています。特にキリスト教とイスラム教の間では、人口・移民問題や「近代化、脱西欧化」やナショナリズムの問題を含み、感情的な衝突が報道されています。最近、平和で安全と思われていたノルウェーで発生した連続テロ事件でも『反イスラム』の文書が犯人から出ていたとの報道がありました。現在、多くのイスラム諸国の経済的発展により、コーランの教えの一つである喜捨により集まった使い道が特定されない莫大なお金が世界を掛け周り、世界連邦の様な考え方も生まれています。

今、この様な大きなイスラム諸国のうねりについては、その背後にうごめく大国の意図を含め、最近出版された「革命と独裁のアラブ」(ダイヤモンド社、佐々木良昭著)でグローバルな視点から詳しく述べられていますので是非一読されることをお勧めします。

私はNPO日本イスラム連盟と言う団体で、イスラム諸国と言う一般の方々の理解から遠い国々と日本とを繋げる活動をしておりました。このNPO日本イスラム連盟を主宰していた佐々木良昭氏が毎日のように uploadしている「中東TODAY」というBlogがあります。イスラム諸国の大きなうねりについてご興味がある方は是非、この「中東TODAY」(blog.canpan.info)を覗いてみてください。殆ど毎日、最新情報とその分析をお届けしています。(2018/08/13現在No.5199号掲載)

さて、ラマダンですがその正確な開始日や終わる日は、イスラム教の高僧が月を見て判断するので国により前後します。ラマダンは言ってみれば日本のお盆のようなもので、遠くの親戚や知人たちが夜毎、集まり飲んだり(アルコール類はありません。)食べたり。どのイスラム教国でも砂糖、肉を含め全ての食品の消費量が2倍から3倍に跳ね上がります。エジプトでは砂糖の消費がこの時期に6倍に成ると報道されていました。殆どのイスラム教徒は、この夜毎の宴会を待ち焦がれ昼間の断食に耐えているのでしょう。特に子供たちは夜遅くまで遊べますし、お小遣いや新しい洋服を着せて貰って大喜びです。テレビ番組もラマダン期間は特別編成の番組を組み、夜通し番組を流しています。

兎に角、ラマダンと言うのは1カ月続く一種のお祭りの前夜祭みたいなものです。このラマダンが終わりますと、国によって多少異なりますが、1週間から10日間の休日が続きます。公式にはこのお休みは3日間ですが、多くの人がこの時期に纏めてお休みを取ります。多くの企業は、働いている人に対して休日前にボーナスを払いますので、現地の建設会社はこの休日前に工事代金の入金を要求してきます。

しかし、このラマダン期間の職場は、寝不足の集団で生産性も大幅に下がります。これが建設現場のような職場では大変な状況が生じます。夜毎の宴会で疲れ果て、睡眠不足で現場のちょっとした物陰には居眠りする労務者がごろごろ、うっかりすると躓くことにもなりかねません。企業によって異なりますが、建設現場の勤務時間は朝の6時から昼過ぎの1時までで、勿論昼休みも昼食時間もありません。

建設現場のように時間に追われる職場では、午後1時から夕方のイフタール(日没時の食事)の後のお祈り時間まで休み、それから仕事を再開し午前2時位まで作業を行うと言う特別作業時間が組まれ、何とか現場の遅れが出ないようにしています。

朝、陽が昇ってから沈むまで飲まず食わずですから、誰しもその日が沈んで食事をして良いと言う合図を待ち受けています。ですからこのイフタール前に車に乗るのは実に危険です。誰しもイフタールの時刻に間に合わせようと、スピードを出して帰宅を急ぎます。このラマダン時期にイスラム諸国に居ると何度も、車の運転手に『ラマダン期間に毎年30回近くもあるイフタールとお前の命とどちらが大切なんだ』と文句を言わなくてはなりません。

ラマダンの時の街の中の祈り

イフタールと言うのは、日没後の何時でも食べれると言う食事ではありません。日没時に食べる事が原則です。ですから外出時にもどこでも食べられるようなSystemが出来あがっています。

エジプトの場合、喜捨の精神が行き渡っているのか、裕福なのか理由は分かりませんが、街の中のいろいろな所に100人以上が一緒に食事ができる位の沢山のテーブルが路上に並べられ、誰でもがイフタールの食事を取ることが出来るようになっていました。私も何度かその路上のイフタールをいただいたことがありますが、イスラム教徒でなくても外国人であっても問題なく、食事が出来ます。

Pakistanでは貧しいせいか、首都イスラマバードでもそんなテーブルは出ていませんでした。ただ、田舎の幹線道路に沿った村では小さな規模でテーブルが出ており、イフタールが摂れました。パキスタンでは、殆どがモスク内でイフタールが摂れるようになっていました。

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