今回の「阿寒平太の覗き見散歩」は、お酉さまをハイライトにして、根岸(前に季語を付けるとすぐに俳句になると言う『根岸の里の侘び住まい』)を覗きながらの樋口一葉の足跡を訪ね、医食同源の精進料理、普茶(ふちゃ)料理を楽しみ、お酉さまの後は、大人の雰囲気のバーで酒を楽しむと言う散歩にご案内します。

散歩の出発点は三ノ輪です。三ノ輪には東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅と都電三ノ輪橋駅がありますが、お勧めは三ノ輪橋駅です。大塚駅前からこの都電に乗って三ノ輪橋までの風景は、他の車窓からの風景とはまるで違います。電車に触れんばかりに目の前を通り過ぎる生活風景は実に新鮮です。

都電三ノ輪橋駅から昭和通りに出て右折し、明治通りの交差点、信号・大関横町を過ぎて直進すると、信号・三ノ輪に出ます。(此処までは5分程度です。) ここの下が東京メトロ・三ノ輪駅で、ここからが今回の散歩の主題が点在する「国際通り」の起点です。

「国際通り」は、松竹の国際劇場(ああ、SKDレビュー!なんと陽気で、華やかで、素晴らしい世界だった事か!) があったことから付いた道路名です。今では、それも浅草ビューホテルになり、名前の根拠をなくし、周辺の商店街は「ビートストリート」と愛称をつけて町おこしの活動をしています。(2005年から浅草ではビート・フェスティバル開催。西の京都にも園部ビートフェスティバルと言う祭りがあります。)
さて、この国際通りの信号・三ノ輪から250m程の所に、信号・竜泉2丁目があり、そこを右折するとすぐに「千束稲荷神社」があります。ここは樋口一葉の「たけくらべ」の中で舞台となった所で、本殿に向かって左側に一葉の胸像があります。「たけくらべ」の中の少年少女たちは、何と生き生きと遊びまわり又、冷酷でありながらやさしい時を過ごしているのだろうかと、思い出しました。

明治の美女、樋口一葉

此処から、再び「国際通り」に出て、それを横切り3つ目の角を右折し、150mほど行くと左手に一葉記念館(台東区竜泉3-18-4、入館料一般:300円、開館時間:9時~16時30分:休館日:月曜日、祝日と重なる場合は翌日)があります。酉の市が開催される24日は、勤労感謝の日の翌日で休館となりますので、此処をこの散歩に組み入れる場合は、休館日と重ならない「酉の市」にこの散歩をしてください。
樋口一葉は、貧しさの打開を目指し小説を書き始めますが、彼女の文学者としての人生は、明治27年12月「大つごもり」の発表から「たけくらべ」の連載が完結する明治29年1月までの、わずか14カ月でした。明治29年11月23日に結核で24歳8カ月の短い人生を閉じますが、翌年には『一葉全集』が刊行されるほど、評価の高い文学者です。この「一葉記念館」には「たけくらべ」の草稿が展示されており、苦労して推敲している状態が判ります。