動態保存の家に住む難しさ
ネパールの首都カトマンズの南に隣接するラリトプール市の世界遺産地域には多くの古いネパールの時代を彷彿とさせる建物が、現代でも生活の場として使われています。まさに動態保存地域です。
日本では地域としての動態保存では世界遺産の「白川郷」が有名です。
ラリトプールには木造の細かな装飾の格子窓が特徴の古い時代の住居が沢山あり、白川郷と同じように今でも住居として使われています。
嘗ては全ての建物は3階半建で統一されていましたが、現状では4階或いは5階建に増築されている建物が大部分です。外壁に日干しレンガを使用している構造となっていますが、窓を含め主要構造部材は全て木造となっています。
白川郷の家は生活空間と作業場という2つの機能を持っていましたが、全ての生活空間は1階にあり、その上階は全て蚕だな或いは養蚕道具スペースが占めて謂わば、生産の作業場でした。其の為、養蚕を行わなくなっても、建物を保存しやすかったと言えます。
ラリトプールの建物は、1階は不浄の階と考えられて、台所は臭気、排煙の為、3階或いは屋根裏階に設けられています。居間は3階、寝室は2階を使います。このように生活空間は建物の上階まで広がっており、それだけ生活しにくいと言えます。
この様な家の多くの家主は、郊外に引越をして、多くの古い建物は内部を細かく間仕切って安く賃貸されています。冬場はプロパンが手に入りにくくなりますし、質の悪い灯油は焚いていると目がしょぼついてきて、涙が止まらなくなります。調査に入ったそこでは、裸の赤ちゃんを抱いたお母さんの傍で裸火が燃えていました。
この様な状況のなか、この歴史的な建物はどうやって生き延びていくのでしょうか?