最近、弔うと言う事に対しても時代の流れで、火葬で消費される多量のエネルギーや排出される二酸化炭素、或いは土葬の為の土地の不足が問題になり、全く新しい弔いの方法が報じられ、すでに幾つかの国では承認されているそうです。

一つは「フリーズドライ方法」です。遺体を液体窒素で-196℃まで冷やしその後、粉々に粉砕すると言う方法で、既に英国やスエーデン、韓国、米国の一部の州で承認されているとの事。次の方法は遺体を絹布で包み、160℃に熱したアルカリ性溶液の中に沈め全て溶かしてしまうと言う方法です。何か異次元の話のようで、そこまでやるのかと言う言葉が出てきますが、土葬から火葬へと弔いの方法が変化した時、遺体を燃やすと言う事に対して同じような感覚を我々の先祖は持ったのかもしれません。

東北地方の葬列のシーンが映画「おくりびと」の中で出てきますが、色とりどりの細長い布の旗指物が行列を彩っていました。この色とりどりの布は、エジプト、ネパール、パキスタンでも見られます。この布は、日本では見られなくなりましたが、色々な国では魔除けとしてお墓の廻りの木に、布が朽ちるまで下がっています。只、日本のお寺が何か行事をするときに、軒下に飾る布の様々な配色はこれとそっくりです。

インドネシアの葬列では、同伴するのは男性だけで、女性は娘のみが許され、なぜか妻は許されません。同じイスラム教の国であってもエジプトでは遺体に多くの女性が、時には泣き女が雇われ、泣き叫びながら行列に墓地(エジプトでは土葬) まで同伴します。イスラム教の場合、通常、女性は、亡くなった方が彼女の夫であっても遺体に面会することはできないとされていますがしかし、最近、時にはこのルールは無視されるように成っています。

お墓も設ける国と無い国があります。インド、インドネシアやヒンドゥー教では火葬した後、遺灰や遺骨を川や海に流し、或いは遺体をガンジス川に流し墓を設けません。かってキリスト教でも遺体を教会の内部に収め、最後の審判の後に復活する時を待ち、墓は設けませんでした。

昔、日本では両墓制をとっている地方がありました。人里から離れた所に遺体を埋める「埋め墓(葬地)」と、人の住む所から近い所に「参り墓」を建て、お参り、祭祀はそこですると言う方式です。只、江戸時代辺りまでは土葬、火葬に限らず墓石、石塔は建立されなかったと言われています。

お墓の形や墓標も国によって様々な形があります。あまり石を加工していない素朴な墓から高度な加工技術を駆使した墓まで様々です。下の写真はボスニア・ヘルツェゴビナの古い時代の墓ですが、これは北欧で活躍していたバイキングの墓の形だそうです。インドネシア民族と同様に海洋民族のお墓の形は、広く世界に広がっています。オランダも古くはインドネシアにコロニーを造り、今でもその足跡をお墓の形に見る事が出来ます。

ボスニア・ヘルツェゴビナの古い時代の墓

 

インドネシアのスマトラ島の近くのシムルー島の古い墓

1992年から1995年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、多くの人が亡くなりお墓の面積が3倍に成ったと言われていますが、その墓地の中を歩くと全く暗さを感じません。様々な墓標には、亡くなった方の写真が墓標に刻まれていますから、どんな人が埋葬されているのかは一目瞭然です。しかし、人間死しても見栄があるのか、墓標の写真と死亡した人の年齢が異なり、男女含めて若い素敵な写真が多いようです。

写真入り墓碑が並ぶボスニアの墓地

 

ボスニアの写真入り墓碑。享年57歳のお墓には思えません

お墓に様々な花を供えると言うのは、日本も他の国も同じです。日本の花の生産の7割が菊と言われていますが、その需要を支えるのが葬式や仏壇に供える花です。墓参りでも今では洋花が広く使われますが、昔はその季節の花が添えられました。日本のお墓では、花立やお線香立てなどお墓参りに配慮した設計に成っていますが、海外の場合、花立があるお墓はそれほど多くありません。

ボスニア・ヘルツェゴビナでの墓地の前には花屋が必ずあって、華やかな色とりどりの花が店先を鮮やかに彩っています。しかし、これが全て造花。生花は全く置いていません。

ボスニア・ヘルツェゴビナの墓地の前のお花屋さん

土葬の場合は、個々人のお墓で謂わば個室ですが、日本のお墓は大部分がその家のお墓で、共同住宅の様な意味を持っています。その為、土葬の場合のお墓参りは個人の命日や、誕生日などの特定の日にお墓参りをする事に成ります。それに対して日本のお墓のようにそれぞれの家、家系と結びついているとお墓参りをお盆やお彼岸などの決まった時にするようになります。
沖縄では毎年4月にシーミー(清明祭)と言う墓参りの行事があり、家族、親戚が料理、お酒を持ち墓参りをします。この行事は、昔の洗骨の儀式の名残だと言われています。 海外の人に聞いてみると、イスラム教の場合、家族でも個人でもお墓参りに行くという習慣は無いそうです。インドネシアのクリスチャンの場合は、死後3日目、7日目、40日目とクリスマスとイースターにお墓参りをするそうです。