ネパールの首都カトマンズに流れるマグマティ川は、源流から河口に至るまでヒンズー教の聖地が河岸に並ぶ聖なる川です。その川が危機に瀕しています。

ヒマラヤ山脈の南側には、山脈と並行して数本の襞(ひだ)が走っています。この襞の間にある首都カトマンズは、昔は水深500mのカトマンズ湖があった所です。そこに流れ込むマグマティ川が運んできた土砂で湖は浅くなり、ついに南側の襞が決壊し今のカトマンズ盆地が出来ました。マグマティ川はネパールを南下し、仏陀が悟りを開き、仏教の生まれた地でもあるインドのビハール州に入り、ガンジス川に合流した後バングラデシュに入り、ベンガル湾にそそいでいます。
首都カトマンズの東側、マグマティ川の河畔にはパシュパティナート(Pashupatinath)というネパール最大のヒンドゥー教寺院があり、そこには火葬場があり、遺灰はマグマティ川に流されます。マグマティ川が合流するインドのガンジス川河畔のヴァーラーナシー(Varanasi)も聖なる場所として、火葬が行われており、バングラデシュに入ると、その河畔のランガルバンドゥ(LangalBandh)もヒンドゥー教の聖地となっています。ガンジス川は上流から下流までのヒンドゥー教の聖地を結び、聖なる川とされています。

写真:Pashupatinath

しかし、カトマンズ市内を流れるマグマティ川は下水と化し、黒い川面が発する悪臭が問題になり、またインドではガンジス川の汚染は他の川の10倍にもなっていると問題になっています。何とか聖なる川を「清なる川」にするためには、「川の流れは、何ものをも飲み込み洗い流してくれる」という意識を変える事が必要なのでしょう。
また、「川を守るためには森を守らなくてはならない」というは鉄則ですが、ヒンドゥー教では「薪を焚く野焼きの火葬によって人は再生する」という思想があり、日本からの白灯油、都市ガス・液化石油ガスによる火葬の技術移転が進んでいないと言われています。ここで火葬技術と書きましたが、火葬には様々な技術が必要です。これは一例ですが、ヒンドゥー教の場合、お墓は持たず遺灰は川に流してしまいますが、日本の場合は遺骨をお骨揚げして、お墓に埋葬するという文化があるため、ただ高熱で火葬すると全て灰になってしまうので遺骨が残るように温度調整する火葬技術が必要になります。

近代的な火葬炉の裏側

人体の組成は、水分60%、タンパク質18%、脂肪18%、鉱物質3.5%、炭水化物0.5%です。ですから、燃焼させるには、灯油の場合50ℓ以上の熱カロリーが必要です。しかし、体脂肪が多い場合は、必要熱量は下がってきます。200㎏以上の体重の遺体の火葬の際に体脂肪の燃焼で炉の中の温度が上昇し過ぎて火災になった例があるそうです。

これは、Wikipediaで拾った情報ですが『2012年竣工のソウル市火葬場は、巨大な美術館を併設し、最新のデザインの外観で、徹底的に環境問題に配慮し、火葬炉も最新鋭技術によりコンピューター制御され、遺骨はロボットが運ぶなど世界でも最新の設備を誇る施設』との事です。

他の稿でも書きましたが、中国国境の海抜8000mのヒマラヤ山脈に発するネパールの川は、日本の本州の幅ほどの距離をインド国境の海抜70mまで、急流となって山を削り、谷を削り駆け下ります。如何に森を守り、川を守るかは、ネパールの100年の計と言えるでしょう。色々な意識や考え方が変わって早く、聖なる川を守ることが出来るようになればと願っています。