ミトコンドリア・イヴ(mitochondrial Eve)
皆さんは、ミトコンドリア・イヴと言う女性をご存知ですか?
聖書に語られているエデンの園でアダムの妻として3760 BC (ユダヤ暦)に生まれ、2820 BC (ユダヤ暦)に940歳で亡くなったEveの事ではありません。

この絵は、ロシアの画家ヴィクトル・カルロヴィッチ・シュテンベルが描いたエデンの園のEveですが、ミトコンドリア・イヴを描いた絵は残念ながらありません。
細胞の中に、ミトコンドリアと言う細胞内小器官が1細胞あたり100個から2000個程度含まれています。このミトコンドリアは、糖や脂質、そして呼吸から得た酸素を使って、エネルギーの源である ATP という物質を作るという重要な働きをしています。
細胞には、細胞核と言う中心体があり、ヒトの遺伝情報であるDNAはこの核の中にありますが、ただ不思議なことに、ミトコンドリアは独自のDNA(遺伝情報)を自分の中に持っており、エネルギーを作るのに必要な遺伝子が含まれるため、世代を超えて引き継がれていきます。
しかし、このDNAは母親からのみ子に引き継がれます。受精後に父性ミトコンドリアが受精卵に入ってくると、瞬時に検知されオートファジー(自食作用)によって分解・除去されてしまいます。
つまりミトコンドリアDNAは必ず母親から子に受け継がれ、父親から受け継がれることはないのです。したがってミトコンドリアDNAを調べれば、母親、母親の母親、さらに母の母の母の…と女系をたどることができるのです。
そして行き着いた先が、約16±4万年前にアフリカに生存していたと推定されるミトコンドリア・イブ(mitochondrial Eve)という女性です。ミトコンドリア・イブとは、ヒトについての分子生物学において、現生人類の最も近い共通女系祖先(matrilineal most recent common ancestor)に対し名付けられた愛称なのです。
下の図は、Internetで拾ったミトコンドリア・イブの図ですが、はるか昔にこんな素敵な女性がいたという事を想像するだけでも楽しくなります。
